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「 Desire - 欲望 - 」




*本編「バビロニア編」の最後、エジプトに帰る船の中のあのシーンを妄想してます。
 コミックス19巻の始めあたり?











情熱の赴くまま水中でひとしきりキャロルを抱きしめ翻弄したその後、船上の甲板で指揮を執るメンフィスの前にキャロルが姿を見せた。
すでにずぶ濡れの衣装を取り去り湯浴みを済ませたのであろう。
鼻腔を刺激する芳しさに目を細める。
まだ日も高いうちでなければ、或いは沢山の兵士や侍女達がひしめいておらねば、思わず引き寄せ抱きしめて唇を奪ってしまっていただろう。
 
「着替えてしまったのか。先程の衣装、そなたにしてはなかなか扇情的であったのに。残念だな」

引き寄せる代わりに揶揄するような言葉を向けると、それを聞くなり頬を膨らませて己を睨みつける姿に口元が緩む。
 
「ん?どうした、キャロル。エジプトへ帰るぞ。嬉しくはないのか?」
「もう、メンフィスったら知らんぷりして!苦しかったんだから!息が止まるかと思ったんだから!」

本心から抗議をしたわけではなかった。
確かに息が苦しかったけれど、それだけじゃない。
急速に求めるメンフィスの体が、水の中だと言うのに熱くて・・・それが胸を苦しくさせたのだから。


婚儀からバビロニアへ旅立つまでの僅かな蜜月の日々。
未だ慣れぬ濃密な時間をふと思い出し、まともにメンフィスの顔を見ていられなくなって、つい意地っ張りな面が顔を出してしまったのだ。
そんな抗議の声に短く笑うと、メンフィスはすぐさまファラオの顔に戻った。
ツロの沿岸守備隊長に指示を与え、ミヌーエ将軍に会議の招集を指示する。
 
せっかくのハネムーンなのに・・・・・・もう。
 
意地っ張りな態度とは裏腹に、キャロルは残念そうにメンフィスを見上げたが、こればかりは仕方ない。


私を助けに来てくれたお陰でかなりの政務が山積しているのよね。
これ以上の我が侭は言えないわ。

 
そっとメンフィスの傍を離れ用意された自室へと戻り、奥の部屋の寝台へと進む。

・・・・・・さすがに疲れたわ。ちょっとだけ横になろう・・・・・・

「姫様、お休みになられますか?」
「ええ、少しだけ休みたいの。悪いけど独りにしてくれるかしら」
「畏まりました。何かございましたらお呼び下さいませ」

休みを取る王妃の為に、部屋の入り口には厚い紗が幾重にも下ろされ、僅かな灯りも消されると、昼間とは思えぬ程の薄暗い空間が作り出された。
役目を終え下がって行く侍女に礼を言って見送ると、キャロルは寝台に横たわった。
腕を瞼に乗せてふうーっと大きく息を吐く。
 

本当に私・・・・・・ようやくメンフィスの元に帰ってこれたのね。
やっと・・・・・・やっとエジプトに帰れるのね。
 

思えば辛いことばかりの旅だった。
精神的にも体力的にも追い詰められ、幾度怯え泣いただろう。
 
そんな憔悴しきった時に砂漠で自分を浚ったあの逞しい腕が、盗賊だと思って思わず噛みついたあの腕が、誰よりも愛しいひとのものだと気が付かなかったなんて。
辛酸な出来事と幸福な瞬間の想いが交差し、閉じた眦からそっと溢れ出る。

これで・・・・・・

これでやっと・・・メンフィスと幸せになれるかしら・・・


 
「―――何を泣いておる」
「きゃっ」

びっくりして飛び起きると、メンフィスが傍にいて自分を見下ろしていた。

「びっくりした」
「何時の間に私の傍を離れた。離れるなとあれ程申したに」
「だって・・・会議とか色々と忙しいのでしょ?お邪魔になると思って」
「何を申すか」

眦の涙を指で拭い、髪を撫でながらメンフィスはまじまじとキャロルの顔を見つめていた。
ようやく落ち着ける場所を手に入れた喜びと安堵が、何時に無く王の瞳の色を優しくさせる。
だがその色合いもほんの束の間のもの。
キャロルの髪を頬を撫でるうちに、刻々とその色合いを切なそうなものへと変えて行く。

「そなたを思い胸が燃えたぞ」
「え?」
「ようやくそなたのぬくもりをこの身に感じながらどうすることも出来ず」
「あの・・・メン―――」
「―――この熱き滾りを受け止めよ」
「メ―――」
 
メンフィスはキャロルを組み敷くと容赦なくその唇を奪った。
先程の水中での続きのように、再びメンフィスの体が熱を帯びていた。

「ダメよ、今から会議があるのでしょう?」

やっとの思いでそう告げると、意地悪な微笑が返ってくる。

「かまわぬ。皆にも僅かな休息時間を与えた。人払いもしてある」
「そっ、そんな」
「キャロル」
「ま、待って!待って!わたし、その・・・・・・」
「何故拒む?」
「ち、違うの」
「何が違う」
「あの・・・」
「はっきり申せ」
「えと・・・あの・・・・・・」

だ、だって、そんないきなり・・・・・・
心の準備ってものが・・・・・・

言葉にならず、ただ口をぱくぱくと動かすばかり。
愛されることにまだ慣れぬ妻のその初々しさに、メンフィスはますます愛しさが込み上げた。

性急に求めすぎたか。
漸く二人きりになれた喜びが思い余ってしまったが、考えてみればキャロルは疲れきっているはずだ。
婚儀まであれ程待ったのだ。
今更ほんの数刻が待てずに如何する。

メンフィスはふっと力を抜いて上体を起こすと、腕で自分を支えながらキャロルの顔を見下ろした。

「・・・・・・メンフィス」

ホッとしたような、少し残念そうな複雑な顔を見せるキャロルに思わず笑みを零す。
優しい瞳を向けられ、髪を撫でられ、キャロルは胸の鼓動が高まるのを感じた。

「・・・・・・よい。これ以上の無体はせぬ」
「メン・・・」
「そなたは疲れておる。ゆっくり休むがよい」

そう言って立ち上がろうとするメンフィスの腕をキャロルが掴んだ。

「?」
「いや」
「どうした?」
「行かないで」
「キャロル」
「・・・そばにいて・・・・・・お願い・・・行かないで・・・」

やっと二人になれたのに・・・・・・

行かないで・・・・・・


潤んだ瞳でメンフィスの掌に頬擦りするようにそっと唇を押し当てた。
 
 
掌への口付け、それは『懇願』の意味。
知ってか知らずか、キャロルの頬が少し紅い。

「・・・漸く素直になったな」
 
掌でキャロルの顔を包み込むようにしてメンフィスが優しく口付ける。

「・・・・・・だって」

言いながらキャロルは恥ずかしそうな顔でメンフィスの胸に顔を埋めた。

「だって、何だ?」
「・・・いや。教えない」
「言わぬか」
「いや!絶対教えない」

漸く素直に甘えてきたかと思えばまたすぐに意地を張る。
まことそなたは!
 
愛しくて堪らず抱きしめる腕に力が込もる。
だがその想いとは裏腹にメンフィスの中で悪戯な残虐心がムクムクと湧き上っていく。
 
「そうか。では仕方ない。わたしは会議へと赴こう。 続きはまた明日だな」

―――!

そんなの・・・・・・

「・・・いや!」
「んん?会議の邪魔はしたくないのであろう?そう申していたではないのか?」
「・・・もう・・・意地悪!」


メンフィスのばか!
意地悪ばっかり言って
いつもそうやってからかって
 
クツクツとした笑いがメンフィスの喉元から聞こえてくる。
 
「わたしが欲しいのなら素直にそう申せ」
「なっ・・・」
「何を恥ずかしがることがある。我々はもう夫婦なのだぞ?」
「!」

そ、それはそうだけど・・・
わたし・・・わたし・・・まだ・・・そんなこと・・・

真っ赤になって胸に顔を埋めたままのキャロルを、優しげな黒い瞳が見下ろした。

まったく世話の焼けるやつめ。
 
指で顎を掬い上げ、真っ直ぐにその瞳を突き刺す。

 
「ではわたしが申そう」
 
メンフィスはキャロルの手を掴み取ると、その白く細い手首にゆっくりと唇を押し当てた。
そしてキャロルの瞳を見据えたまま、数回、食むるように啄む。

―――!

「・・・そなたが欲しい」
「メ・・・・・・」
「・・・嫌か?」
「・・・・・・」

・・・ううん・・・

ううん、メンフィス・・・・・・

 
微笑を携えながらゆっくりと金色の髪が揺れて、そして・・・・・・
 
「わたしも・・・・・・あなたが・・・・・・」
 
消え入りそうな声でそう告げて、口付けられた手をメンフィスの項に這わせ、自分から唇を寄せた。
一度離れた唇が、褒美のようにキャロルの唇を追いかけて啄み甘噛みする。
 
「わたしが・・・なんだ」
「え?」
「みなまできちんと申せ」
「もう!」

意地悪な笑みと尖らせた唇。

やがて。

その二つが重なり、二つの掌が重なり、ふたりの指が絡まり合っていった。
 
 


手首への口付け。
 
それは『欲望』の意味。

 
『あなたが欲しい』

何時の日か、必ずやそなたの口から言わせてみせようぞ。

 
メンフィスは意地悪な笑みを浮かべながら、『欲望』を意味する場所へと再び唇を這わせていった。

 
 
 
 




このお話の言い訳・あとがきはこちら → 言い訳部屋 「Desire - 欲望 -」





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